♪うだうだ、大宇陀~
誰もおらんのに「うだうだ」もないやろうと言われれば、返す言葉もござりませんなあ。
「しかし、なんやねえ。さすがにこの時間やと、どこも開いてないねえ。」
「まあ、お前一人のために、町中のお店を開ける訳にはいかんわなあ。」
「あ~あ、今、開けてくれたら、開けてくれた店全部で、何か買わせてもらうんやけどなあ。」
「おやまあ、そんな事言って、財布にいくら入ってるのん?」
「…千円札やったら、ある。」
「答えになってないやん。」
また、私の中にいる、二人の私が私の頭の中で何やら喋っとります。
「森野薬草園か。看板を見ると随分と古くからあったみたいやね。」
「なにやら、いろいろ賞もいただいたはるようやね。」
「けど、吉野葛の本場って吉野とちゃうのん?」
「原料は吉野でも、精製はこのあたりが本場みたいやで。」
「ふ~ん、モノ知りやね。」
「えっへん。」
「別にふんぞり返ることもないと思うけど…」
「おっ、ここも古くからあるような薬局やねえ。」
「看板に『天保九年創業』って書いてあるで。」
「ホンマや。天保九年って、いつ頃?」
「わからん。わからんけど、最近でないことは確かや。」
「看板に書かれてある電話番号も昔のものみたいやね。」
「そうやなあ。局番が一桁って、今はないやろうな。」
「看板も天保九年に作らはったんやろうか?」
「アホか、お前は。天保九年に電話なんかあるかいな。」
「あ、『わかもと』って聞いたことあるわ。」
「そうやなあ。いつ頃やったかなあ。CMやってたような気がするわ。」
「うんうん。やってた。ヘチマコロンとか、しろ子さんくろ子さんのロゼッタ洗顔パスタとか、牛乳石鹸、ミツワ石鹸とかあったなあ。」
「あんまり言うたら、年がバレるで。」
「今年、成人式を迎えました…で通らんやろか?」
「サバを読むにも程があるで。」
「『わかもと』ってどんな薬やってんやろう?」
「そやなあ、たぶん栄養剤みたいなもんとちがうかなあ。若さの素から『わかもと』ってネーミングになったんやろうね。」
「ハハハ、最近の子供たちみたいやねえ。」
「なんで?」
「なんでも略す(笑)」
「何かここに面白い貼紙あるで。『オードムーゲあります』やて。」
「オードムーゲ??? 聞いたことないなあ。」
「何の薬やろ? 聞いてみたいなあ。」
「『あります』なんて書いてあるところをみると、希少品なんかも知れんね。」
「バイアグラみたいな?」
「さあ、それはわからん。」
「けど、不思議やなぁ。奈良やったら『陀羅尼助』の看板あってもよさそうに思うけど。」
「ホンマやなあ。」
(結局、オードムーゲって何かわからず。)
「田中日進堂やて。ここの『宇陀五番』、このあたりでは有名らしいで。」
「知ってるよ。」
「あれ?何で知ってるのん?」
「2月26日の記事、読んだもん。」
「なーんや。けど、お店閉まってるとなったら、無性に食べてみたくなるなあ。」
「食べてる暇なんかあれへん。」
「そやなあ。」
「『きみごろも』やて。」
「とっくの昔に、知ってるで。」
「これも26日の記事で知ったんやろ。」
「ピンポーン!」
「ピンポーンや、あるかいな。最近知ったんやがな。」
「…。」
「お前、焦点が『きみごろも』の後ろの樽に定まってない?」
「そんな事ないで。」
「そんな事ないでって言うても、よだれ出てるし。」
「…。」
「それに、千鳥足で歩いてるし。」
「飲んでもおらんのに千鳥足になるかいな。」
あ~あ、独り言もここまでいったら、病気ですな。
奈良・大宇陀